vol.425【実践コラム】 節税による悪循環
…節税を止めれば資金繰りが楽になるかもしれません。
節税の目的はキャッシュアウトを減らして資金を増加させることです。しかし、本来の目的を忘れ、節税自体が目的となってしまっている経営者様が多くおられます。
ある社長様のお話です。その社長様はウェブサイトの制作事業で起業しましたが、大手企業をクライアントに持っていたため、設立当初からまとまった売上が立っていました。しかし、支払う税金を少しでも減らすことが経営者の技量だと考え、1億円の売上が出来れば、9,990万円の費用を使うようにしていたそうです。
税金とどう向き合っていくかというのは、経営の大きなテーマのひとつです。納税が資金繰りを圧迫することもありますし、税金に対する過度な意識が、会社の成長を妨げることもあります。同社は後者のケースです。
キャッシュフローを最大化することが本来の目的であるはずなのに、節税に意識が行き過ぎると、税金を出来るだけ払わないことが目的になってしまいます。利益を出さないように費用を増やせば、税金を少なくするという目的は達成できますが、手元にキャッシュは残りません。財務内容も悪くなり借入もままならないため、資金繰りは当然厳しくなります。
同社の社長様も、設立から5年ほど経ってようやくそのことに気づいたそうで、「節税を止めた途端に資金繰りが楽になりました。銀行が積極的に融資をしてくれるようになり、1,000万円近くの税金を支払っても、億単位の資金を調達できるので資金に余裕ができました。」とおっしゃっておられました。
税金は最大でも利益の35%程度です。利益以上に税金を払うことは決してありませんので、税金が原因で倒産することは理論上ありません。ただ、利益を資産の購入に充てたり、利益の受取よりも税金の支払いが先に来たりする場合は納税が苦しくなります。この場合の問題は税金ではなくファイナンスです。税金を払わないことに一生懸命になるより、ファイナンスを適切なタイミングで行い、税金を無理なく支払えるようにすることの方が重要です。
節税をしているのに資金繰りが苦しいと感じておられる社長様はファイナンスを上手く活用できていないかもしれません。
是非ご相談ください。