vol.500【経営コラム】創業時や新規事業の立ち上げ時には、計画をコントロールできません!
…それでも、経営を管理する、この目標を捨てないでください。
創業時や新規事業立ち上げ時に、計画通りコントロールすることはほぼ無理です。売上高・粗利益率・販管費のすべての項目を確実にコントロールすることは最終目標です。
■経営の最終目標は、様々な指標を確実にコントロールすることです。これができれば、結果として望む利益も創出できます。
◆ただ、これらの指標は、それらが複雑に絡み合っているので厄介です。
例えば…
- 売上を上げようとすると、販促費(販管費)が膨らむ。
- 一方、販促費(販管費)を投入しても、予定通り売上が増えるわけではない。
- 割引をして粗利益率を落とすと売上が増えることがある。
- ただ、売上が増えても、粗利益の総額(売上×粗利益率)が増えないこともある。
- 逆に、値上げをすることで、売上が増えることもある。
- 営業人員(販管費)を増やせば売上が増えるはずである。
- ただ、人件費(販管費)の増加分を賄えないこともある。
- 旅費交通費(販管費)を減らせば、売上が落ちることがある。
- 開発費(販管費)を増やせば、将来の売上は増えるはずだ。
- ただ、将来とはいつなのか、また、どれぐらいなのか予見しにくい。
◆また、投資と成果には時間差が出ることも問題を厄介にしています。
例えば…
- 販促費(販管費)の投入と売上の増加には、タイムラグが発生する。
- 営業人員(販管費)の投入と売上の増加には、さらに大きなタイムラグが発生する。
- 開発費(販管費)の投入と売上の増加には、相当長期のタイムラグが発生する。
◆本来コントロールできるはずの、単独の販管費項目ですら見込み違いが発生します。
例えば…
- 人件費(販管費)に想定外の時間外手当が発生して止まらない。
- 採用がうまく進まず、採用コスト(販管費)が膨らんだ。
- 投資(販管費)が計画を大きく上回ってしまった。
- 原価の高騰で粗利益率が下がってしまった。
だから経営とは面白くもあり辛くもありますが、社長という道を選んだのなら、楽しみながら取り組みたいものです。
■長い時間を経て、経営管理体制を構築して、安定した業績を出せている会社は、様々な指標が、結果として適正にコントロールされています。
既存の業容のまま、少しの成長を付加しようとするとき、結果に大きな狂いは生じないはずです。販管費に新規採用分の人件費や追加の開発費・販促費等を追加して、それらの売上に対する貢献分を売上に足しこんで利益を予見します。ただ、大きな投資や新しい事業に挑戦する時は、上記の様に容易ではありません。現業の指標に対して、動く費用の割合が大きくなるので、その精度は著しく低下します。
■創業時や新規事業の立ち上げ時に、計画通りコントロールすることはほぼ無理です。
第20期目に立てた第21期目の計画は、総じて正しく終結するはずです。
一方、創業時に立てた第1期目の計画は、概ね当たりません。
故に新規事業の立ち上げ、創業は、少なくない割合でうまくいきません。また「創業事業計画を鵜呑みにしてはいけません。」とお伝えするのはこのためです。
■それでも、経営を安定・成長させるためには…
- ◆コントロールできることを完全にコントロールすること
- ◆頑張ればコントロールできることをできるだけコントロールすること
- ◆コントロールできないことには、出来るだけ適合すること
この三つを意識して経営していかねばなりません。極めて難解なコントロール業務も、意思を持って継続すれば、何とかなるものです。
経営の最終目標は、売上高・粗利益率・販管費のすべての項目を確実にコントロールすることです。これができれば、結果として望む利益も創出できます。まずは、月次の資金繰り管理から始めてください。
経営を管理する、この発想は極めて重要です。意識して継続すれば管理は出来るようになります。