vol.580【実践コラム】決算書の簡易セルフチェックについて

…財務目線=金融機関目線で自社の決算書を確認してみましょう。

金融機関は「決算書」を拠り所として融資審査を行います。中小企業の場合、税理士事務所が税務目線で作ることが多い決算書ですが、金融機関は税務署ではありませんので、「税金が正しく計算されているか。」ではなく、「貸したお金が本当に返ってくるか。」という目線で見ています。よって、税務上は正しい決算書であっても、提出された決算書をそのまま分析するのではなく、財務の目線で修正しています。

下記にセルフチェックの手順をご紹介します。すべての金融機関が必ず下記の手順で診断している訳ではありませんが、基本的な考え方としてご了承願います。

1.損益計算書の修正および診断

◆減価償却不足を修正します。

減価償却の未計上は税務上問題ありませんが、利益が正しく計上されないため、財務上は必ず計上します。よって減価償却不足がある場合、「税引き後利益-償却不足額」で利益修正を行います。

◆役員報酬を修正します。

役員報酬を減らして利益を大きく計上するなど、役員報酬は利益の調整弁になりやすい項目です。役員報酬額を実際に必要な生活費よりも過小に計上している場合は、「実際に必要な生活費(※360万円程度)-役員報酬額」を税引き後利益から差し引きます。反対に実際に必要な生活費以上の役員報酬を得ている場合は、「役員報酬額-生活に必要な生活費(※800万円程度)」を税引き後利益に加算します。

​◆修正後の損益計算書を基に返済能力を診断します。

企業の返済能力は、「修正後の税引き後利益+減価償却費」で求められます。この値がプラスであれば第1段階の診断はクリアです。マイナスであればプロパー融資を受けるのは難しくなります。

2.貸借対照表の修正および診断

◆不良資産を修正します。

資産の中から、実際は価値の無い資産を減算していきます。例えば、回収不能な売掛金や貸付金、不良在庫、使途不明な仮払金などは減算の対象です。販売先が破産を申し立てた場合、税務上は破産手続きが完了するまで資産に計上しておかなくてはなりませんが、実態は回収見込みが薄いため、財務上は減算します。

◆返済不要な負債を修正します。

社長個人からの借入金など、差し迫って返済が不要なものは負債から減らすことが出来ます。

◆倒産しにくい会社かどうかを「自己資本」で判断します。

この場合も、修正後の貸借対照表を基に、「修正後の資産-修正後の負債」で自己資本を算出します。損益計算書の診断結果が良好で、この値もプラスであれば融資を受けられる可能性はさらに高くなります。

以上、診断の結果はいかがでしたでしょうか。
ひとつでもクリアできていない項目があれば財務面に問題を抱えていることになりますので、お早めにご相談ください