vol.713【実践コラム】利益と現金のズレを早めに見つける見方について
…損益だけでなく、売掛金と在庫と借入返済の動きを毎月確認します。
前回は、黒字でもお金が残らない原因として、売掛金、在庫、設備投資、借入返済の動きを整理しました。今回は、利益と現金のズレを早めに見つけるために、社長が毎月どこを確認すると判断が安定するかをお話しします。
最初に置きたい前提は、損益計算書だけでは資金の動きは分からないという点です。損益計算書は儲かったかどうかを示しますが、現金の増減は売掛金や在庫、投資、借入返済で決まります。黒字で安心しているうちにキャッシュが薄くなる会社は、この違いを見落としやすくなります。
毎月の確認で最初に見るのは、現預金の残高です。金額そのものより、月商一か月分以上という基準を維持できているかが重要です。基準を下回る見込みが出た時点で、原因を分解して手を打つ必要があります。
次に確認したいのは、売掛金の増減です。売上が増えると売掛金は増えやすくなります。ただし売掛金の増え方が売上の伸びより大きい場合、回収の遅れが混ざっている可能性があります。増加が続いている場合、入金サイトと回収状況の確認が必要です。
三つ目は在庫です。在庫は現金が形を変えたものです。在庫が増えるほど、現金は社内で動かなくなります。売上が伸びていないのに在庫が増えている場合、滞留の可能性が高まります。仕入れの量と販売のペースが合っているかを早めに確認します。
四つ目は買掛金です。買掛金が増えると一時的に現金は残りやすくなりますが、支払いの先送りと紙一重です。買掛金が増えている場合、支払い予定の見通しも合わせて確認します。月末の残高だけで判断せず、翌月の資金繰りにどう影響するかを意識します。
五つ目は借入返済です。返済は損益計算書には費用として出ません。利益が出ていても、返済が重いと現金は減ります。元本返済が毎月いくら出ていく設計になっているかを把握しておくことが重要です。利益の数字よりも、現金の出口として確実に効く項目です。
この五つをセットで見ると、利益と現金のズレは早めに見つけられます。現預金が減っている。同時に売掛金か在庫が増えている。返済も重い。こうした形が見えた時点で、資金繰り表を更新し、最も資金が薄くなる月を特定します。
確認の目的は、数字を細かく追いかけることではありません。月商一か月分以上のキャッシュを維持できる状態を保つことです。
この基準に照らして、売掛金、在庫、買掛金、返済の動きを毎月確認する。この型ができると、黒字倒産の芽は早い段階で摘めます。

