vol.718【経営コラム】脱・自前主義!(その2)

…実在モデルを想起させる典型的な5つの成功パターン

前回号で紹介した通り、協業戦略は中小企業が成長の限界を突破するための有力な経営手段です。では、実際に協業によって成果を上げている中小企業は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、中小企業経営者が自社に応用しやすい形で、協業の成功事例を五つ紹介します。

第一の事例は、販売協業による市場拡大です。
地方で専門性の高い製品を製造していたメーカーが、全国に顧客基盤を持つ商社と協業しました。メーカーは商品力には自信がありましたが、営業人材が限られ、販路拡大が進んでいませんでした。そこで商社の営業網を活用し、自社製品を既存顧客に組み込んでもらう形で展開した結果、短期間で売上が大きく伸長しました。自社で営業体制を構築していれば数年かかった成長を、協業によって一気に実現した好例です。

第二の事例は、開発協業による新規事業創出です。
既存事業が成熟期に入っていたサービス業の企業が、ITに強みを持つ企業と協業し、新サービスを立ち上げました。自社は業界知見と顧客理解を提供し、パートナー企業はシステム開発とデータ活用を担いました。単独では着想止まりだった構想が、協業によって事業化され、新たな収益の柱へと成長しています。強みの異なる企業同士が役割を明確に分担したことが成功要因です。

第三の事例は、人材協業による経営力の強化です。
専門人材の採用に苦戦していた中小企業が、同業他社や専門会社と協業し、プロジェクト単位で人材を共有しました。正社員採用に比べ固定費を抑えつつ、高度な専門知識を経営に取り込むことができ、業務の質とスピードが大きく向上しました。
「人を雇う」という発想から、「人と組む」という発想に転換したことが、経営の柔軟性を高めました。

第四の事例は、DX協業による生産性向上です。
アナログ業務が中心だった企業が、DXに強みを持つパートナー企業と協業し、業務プロセスの抜本的な見直しに着手しました。
単なるシステム導入ではなく、業務フローそのものを再設計したことで、間接業務の工数削減とミスの減少を実現しました。DXを「ITの問題」ではなく、「経営改革」と捉え、外部の知見を積極的に活用した点が成功につながっています。

第五の事例は、協業から発展した長期的パートナーシップです。
当初は限定的な業務協業としてスタートしましたが、相互理解が深まり、次第に事業計画や投資判断まで共有する関係へと発展しました。結果として、資本提携やM&Aも視野に入る戦略的関係へ進化しています。協業を単発で終わらせず、中長期の企業価値向上につなげた点が特徴です。

これらの事例に共通しているのは、協業を「場当たり的な対応」ではなく、「経営戦略」として設計している点です。自社の強みを明確にし、何を提供し、何を得るのかを定義したうえで協業に臨んでいます。

中小企業にとって、協業は特別な企業だけのものではありません。むしろ、経営資源に制約があるからこそ、協業の効果は大きくなります。自社だけで抱え込む経営から脱却し、外部と組むことで成長を加速させる。この発想転換が、次の成長ステージへの扉を開くことになります。