vol.719【経営コラム】強力な自民党・高市政権の誕生を踏まえて

…政治ではなく経営戦略に落とし込む!

強力な自民党、そして高市早苗政権の誕生は、日本の経済運営における明確な「意思表示」です。緊縮から積極財政へ、調整から成長へ、そして曖昧な全方位外交から国益重視へと国の進む方向はこれまで以上に分かりやすくなります。中小企業経営者は、この変化を単なる政治ニュースとして眺めるのではなく、自社の経営戦略に直結する前提条件として受け止める必要があります。

まず最大のポイントは、国が再び産業政策を前面に出してくるという点です。安全保障、エネルギー、食料、半導体、防衛、インフラ、デジタルといった分野では、国策としての投資と規制の方向性が明確化していくでしょう。ここで重要なのは、「自社は直接関係ない」と切り捨てないことです。中小企業の多くは、これら成長分野の一次請けではなく、二次・三次のサプライチェーンを支える存在です。自社の技術、ノウハウ、地域性が、どの国策分野と接続し得るのか。この問いに答えを出せる企業だけが、次の成長機会を掴みます。

次に、価格と賃金に対する経営者の姿勢が、これまで以上に問われます。高市政権下では、物価上昇と賃上げを前提とした経済運営が進む可能性が高く、「安さ」だけに依存したビジネスモデルは確実に行き詰まります。価格転嫁ができない理由を外部環境に求めるのではなく、自社が「選ばれる理由」を持っているかどうかを直視すべきです。付加価値を言語化できない商品・サービスは、いずれ市場から退場を迫られます。

三つ目は、調達・生産・連携の在り方の見直しです。地政学リスクの高まりを背景に、過度な海外依存は経営リスクとして顕在化します。国内回帰、近接調達、複線化されたサプライチェーンが評価される時代において、中小企業同士の連携や協業は極めて有効な戦略となります。単独で戦う発想から、束ねて競争力を高める発想へ経営の前提そのものを切り替える時期に来ています。

四つ目は、人材戦略の再構築です。国が産業競争力を重視する以上、人材はコストではなく戦略資源です。年功や属人的な処遇を見直し、専門性と成果に基づいた評価・報酬体系へ移行できるかどうかが、企業の将来を左右します。中小企業であっても、成長ストーリーと経営者の覚悟が明確であれば、人は集まります。

最後に強調したいのは、経営者自身の意思決定の速度と覚悟です。強い政権の誕生は、変化を先送りしてきた企業には逆風となります。しかし、意思決定が早く、環境変化を自社の戦略に落とし込める中小企業にとっては、これ以上ない追い風です。

高市政権下の日本は、「守る経営」よりも「攻める経営」が評価される時代に入ります。国の進む方向が明確になった今こそ、中小企業経営者は自社の立ち位置を再定義し、戦略的に次の一手を打たねばなりません。その差が、5年後、10年後の企業価値を決定づけるはずです。