vol.738【実践コラム】決算は迎えるものではなく、設計するもの
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決算書が出来上がったとき、社長の受け止め方は大きく2つに分かれます。1人は、そこで初めて結果を知ります。思ったより利益が出ていて納税額に驚く、あるいは思ったより悪くて銀行への説明に悩む。もう1人は、数か月前から着地をほぼ把握していて、決算書は確認のために目を通すだけです。2人の違いは、経営の能力ではありません。期末の前に、着地見込みを出していたかどうかの違いです。11月は、決算前に社長が考えておきたいことをテーマにお話ししていきます。
決算前に考えることに意味があるのは、決算日を過ぎると数字が確定してしまうからです。期末を越えれば、できることは集計と申告だけになります。一方、期末の2~3か月前であれば、まだ判断の余地が残っています。滞留している在庫を処分するか、売掛金の回収をどこまで進めるか、予定している設備投資を今期に実行するか来期に回すか、借入をいつ実行するか。こうした判断は、数字をいじることではなく、決算日までに下せる経営上の意思決定です。そして、その判断の結果は、そのまま決算書に反映されます。決算は、迎えるものではなく、期末までの判断を通じて設計するものだと考えると、決算までの過ごし方が変わります。
着地見込みの出し方は、難しくありません。直近の試算表で期首からの累計を押さえ、残りの月数分を見込みで足します。売上は受注残や直近数か月の平均から、原価は粗利率から、固定費は月額に残り月数を掛けて見積もります。精緻である必要はなく、利益の着地がおおよそ見えれば十分です。ここで必ず加えていただきたいのが、キャッシュの着地です。期末時点で手元にいくら残るかを、資金繰り表で合わせて見ます。利益の着地とキャッシュの着地は、同じ方向を向いているとは限りません。利益は出ているのに期末の残高が薄い、という形は珍しくなく、2つを並べて初めて、決算前に打つべき手が見えてきます。
着地が見えると、動き方が具体的になります。利益が大きく出そうなら、納税資金を先に確保したうえで、必要な投資を今期に前倒しするかどうかを落ち着いて検討できます。利益が薄そうなら、決算後に慌てるのではなく、銀行にどう説明するかを今から組み立てられます。期末の手元資金が薄くなりそうなら、決算前に運転資金の相談を済ませておけます。決算書は、翌1年間の銀行の見方を左右する成績表です。出来上がってから対応するのと、出来上がる前に手を打つのとでは、同じ数字でも意味が変わってきます。
1つだけ注意しておきたいのは、着地を設計するとは、数字を良く見せることではないという点です。無理な節税で現金を減らしたり、実態と異なる処理で利益を整えたりすれば、翌期の資金繰りと銀行からの信頼を削ります。設計の中身は、決算日までに下せる正当な経営判断を、見通しを持って行うことに尽きます。
11月は、この流れに沿って、決算前に整えておきたい貸借対照表の項目、利益と納税と資金繰りの関係、そして決算を来期の計画につなげる見方を順に取り上げていきます。次回は、銀行が決算書のどこを見るのか、そして決算前に整えておける項目についてお話しします。
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