vol.472【経営コラム】 事業再構築のための経営の着眼点(その5)

…社員を個人事業主化した事例!社員を雇用しない経営を行う
事例!

前回号の続きです。

事業再構築のヒントは、人事分野にもあります。正社員を、終身雇用を前提に雇用する時代は終わったようです。以下、新しい雇用形態とフリーランスを主戦力として経営する会社様の事例をご紹介します。

■着眼点6:社員を個人事業主化した事例!

体脂肪計で国内シェア首位の健康機器メーカー、タニタ(東京・板橋)は2017年に新しい働き方の制度を導入した。タニタの社員が「個人事業主」として独立するのを支援するというものだ。独立した人には、従来のタニタでの仕事を業務委託し、社員として得ていた収入を確保する。こうすることで働く時間帯や量、自己研さんにかける費用や時間などを自分でコントロールできるようにするのが狙いだ。副業としてタニタ以外の仕事を受け、収入を増やすこともできる。

発案者であり、制度設計を主導した谷田千里社長は、「働き方改革=残業削減」という風潮に疑問を抱いていたという。働きたい人が思う存分働けて、適切な報酬を受け取れる制度を作りたいと考え、導入したのがこの「社員の個人事業主化」だ。
開始から2年半がたち、手ごたえを感じているという谷田社長に話を聞いた。対象はタニタ本体の社員のうち、希望する人。退職し、会社との雇用関係を終了したうえで、新たにタニタと「業務委託契約」を結ぶ。独立直前まで社員として取り組んでいた基本的な仕事を「基本業務」としてタニタが委託し、社員時代の給与・賞与をベースに「基本報酬」を決める。基本報酬には、社員時代に会社が負担していた社会保険料や通勤交通費、福利厚生費も含む。社員ではないので就業時間に縛られることはなく、出退勤の時間も自由に決められる。基本業務に収まらない仕事は「追加業務」として受注し、成果に応じて別途「成果報酬」を受け取る。タニタ以外の仕事を請け負うのは自由。確定申告などを自分で行う必要があるため、税理士法人の支援を用意している。契約期間は3年で、毎年契約を結びなおす。2017年1月から始めた8人の場合、平均の収入は28.6%上がった。この中には、従来会社が支払っていた社会保険料が含まれ、独立した社員は任意で民間の保険などに加入する。一方、会社側の負担総額は1.4%の増加にとどまった。3年目に入った現在、26人の社員が独立した。

日経ビジネス・庄司容子氏の記事を引用させていただきました。

◎社員が担っていた社内業務を、その社員が引き継ぎながら独立してもらう、併せて副業等も可能にして自由に働いてもらう制度は斬新です。もちろん課題も山積でしょうが、汎用性のある選択肢の一つに挙げられます。

■着眼点7:フリーランスを戦力として活用する事例!

あるWEBマーケティング会社は、設立当初から社員の雇用は行わず、年商4億円弱の今に至っても、社長と秘書兼事務の2名で運営しています。業務は外部のフリーランスに原則すべて業務委託して、受注窓口業務及び検収責任のみを担っています。収益は、売上の約80%が外注費(原価)、約20%が粗利益、経費は極小で極めて高収益です。

◎アウトソーシングではなく、そもそも外部のフリーランスを戦力と定義して事業を始められたようです。副業解禁やフリーランスが増加するトレンドの中で、このモデルは今後ますます増えるはずです。

■「専門性の高い業務とルーチン業務はアウトソーシングを活用して」…このやり方はひと昔前の話になりそうです。専門性の高いフリーランスが多数輩出され、また、ITツールが進化した令和の時代は、事業の組み立て方も変わってくるのでしょう。アウトソーシング業務に対する制約がなくなりそうです。そもそも外注先に退職リスクはありません。契約先である経営者(フリーランス)が社員に比して責任感が低いとの論拠も希薄です。また、労務リスクも大幅に減少します。経営の新しい型として認識しておいた方がよさそうです。

…次回につづく